アパレル生産におけるデジタルトランスフォーメーション

ピーター・ディアマンス著『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』を読んで、これがとても面白かった。AI ,機械学習,クラウド化,量子コンピュータといった先端のテクノロジーが複合的に機能することで世界が加速度的に変わっていくという話で、ミーハーな感想だけど「この時代に生まれてよかった」と思える本でした。

アパレルをやってる身としては「このテクノロジーの恩恵を受けたい。活用したい」と強く思ったので、アパレル企業はどのようにテクノロジーを活用できるのか?を調査してまとめてみます。

販売の DX と生産の DX

アパレルの DX には「販売の DX 」と「生産の DX 」という、大きく2つの種類があると大雑把に理解しています。以下図のようなイメージ

「販売の DX 」は国内においても情報が出回っている印象があって、以下のような取り組みがそうだと認識してます。

  • AI を活用して販売データを分析し売れ行きの傾向を予測する
  • アプリの活用により顧客との定期接触頻度・ロイヤリティを高める
  • 販売の主戦場をリアルからデジタルへシフトする( SEO , WEB 広告等のデジタルチャネルを活用する)

arkhē も店舗を持たずにデジタルチャネルだけで運営してるので、販売の DX という文脈に乗っかってる感じ。いずれは AI を活用してやっていきたいんですが、商品数や顧客数等のデータの”数”が一定以上無いとワークしなさそうで、当分先になりそう。あと、まだテクノロジーとして発展途中なので大衆化されてなく、現状だと活用コストが高すぎる印象があります。

バリューチェーンに見る生産のDX

「生産の DX 」といっても範囲が広く全体像を掴みづらいので、以下のように、バリューチェーンの工程別に整理して説明することにします。

  • 商品企画
    • バーチャルサンプリング( 3D ソフトウェア)
  • 素材開発
    • IoT
    • 材料科学
  • 製造
    • 3D プリンティング

本稿のテーマは「生産の DX 」なので触れてないですが、商品企画〜素材開発〜製造、というバリューチェーンを経た後は、「販売の DX 」フェーズに移行するようなイメージをしています。

商品企画

バーチャルサンプリング(3Dソフトウェア)

apex4
島精機製作所のAPEX4

デジタル上で商品のモデリングを行うのがバーチャルサンプリング。「パターンを書き、生地を仕入れて染色・裁断、そして縫製して、ようやくサンプルが出来上がる」という一連の作成プロセスを、デジタル上で完結可能になる。上の GIF 画像は島精機製作所の APEX4 というソフトで、配色を自在に設定できるとか、膨大なテキスタイルのデータと連携するとか、ファッションに特化したソフトウェアです。

メリットは「生産リードタイムが削減されるから、市場投入までの時間を短縮できる」「いちいちサンプルを作らないで済むので、コストが削減される。あと、素材の無駄が発生しない」とかで、割と分かりやすいので、社内を説得しやすそうです。コストメリットが明確なテクノロジーは DX の中でも比較的早期に浸透するんじゃないかと思う。

発展途中のテクノロジーなので、「それで全部がうまくいく」ということはなく、結局何かとトレードオフになるはずで、恐らく「デザインの自由度」とか、現状だと満足いかない機能もあるはず(実際にソフトを触った訳じゃないので推測です)

素材開発

IoT

https://atap.google.com/jacquard/

テキスタイルにIoT技術を織り込んでスマートウェアを作る、というのがアパレル文脈の IoT です。Google の Jacquard とかがそうです。

Google の Jacquard を対応しているウェアと連携すれば、「袖を触るだけで写真を撮影できる」「ジェスチャーだけで音楽を流す」といったことが可能になります。今はリーバイスやナイキといった大手メーカーと連携して、対応可能プロダクトを販売してますね。

その他にも、アパレル文脈の IoT を例に取ると、以下のようなことが実現可能です。

  • 生地に織り込まれたセンサから心拍数や体温等の身体データを取得する
  • あるいは、歩数や消費カロリー等の行動データを取得する
  • センサで姿勢の良し悪しを判定し、姿勢が悪ければ矯正するように振動を発する
  • 商品自体に内蔵されたセンサを使用することで在庫管理を自動化する

材料科学

とても大雑把にいうと、テクノロジーの発展によって新しい素材を作ろうというのが材料科学です。「きのこレザー」が流行っていますが、それも材料科学の一種ですね。ファッションの領域だと、サステナブルの文脈で使われることの多いテクノロジー(きのこレザーもその一種)

最近だと、クモの糸から取れるタンパク質をテキスタイル化する、のも一つのトレンドになってます。その分野のパイオニアであるボルトスレッド社が作成したネクタイを見ると、表情はシルクのようで高級感があります。 染色の自由度も高く、テクノロジーとして十分に活用できるフェーズにあることが分かる。

https://boltthreads.com/technology/microsilk/

生産

3Dプリンティング

アパレルにおける「生産の DX 」の一丁目一番地が 3D プリンティング。なぜなら、他の技術と比べて享受可能なメリットが多いから。

  • 複雑性の高い造形が作成可能で、既存の方法に比べてデザインの自由度が拡張されている
  • サンプル作成のリードタイムの短縮
  • 同様にコストも削減される
  • 素材の無駄を削減可能(裁ちクズが出ない)

デジタルトランスフォーメーションが進みやすくなるための重要ファクターがコストメリットなので、3Dプリンティングはそこのメリットが特に強い。あとプリンタ自体のコストも減少傾向で、小さいファクトリーでも導入可能になってくるはず。

まとめ

生産パートのデジタルトランスフォーメーションが実現されると、それは企業の競争優位性になる以外にも数多くのメリットがあります。多くの発展途上国上での劣悪な労働環境や、環境汚染といった社会的課題にもよい影響が表れるでしょうし、生産工程がデジタルに置き換わることで、生産性が高り、商品の価格も下がるなど、われわれ消費者にとっても望ましいことが起きるはずです。

arkhēもいずれは生産プロセスをデジタルに置き換えていくぞ。

arkhē:https://arkhe.tokyo/

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